第二話
携帯のフタが外れバッテリーが飛び出した。
バッテリーの表に貼ってある「夢は見るものじゃない 叶えるもの」という初期安室ちゃんバリの台詞の横にコビコビのネコ勇者の挿し絵が描かれたシールがスベッていた事に、その時初めて気付いた。
俺はシールを剥がし、バッテリーをはめ込み、フタを付けながら通話ボタンを長押しし、トライに電話を掛け直した。
どこの情報か?高校生が行けるものなのか?矢継ぎ早に問いただした。
「何で知ったかは言えないけど、確かな話なんだ。高校生って事は黙ってれば大丈夫だよ。大人っぽい格好で行けばいいんじゃない?」
またいつもの感じだった。
肝心な事は何も言わず、期待ばかり煽って来る。
最早アイツがマルチの人間だ。
どうせ今回も「関東エリアの虎」あたりに会わされて、特に名水でもない水が入った5リットルボトルでも買わされるんじゃないだろうか?
そんな不安が胸を霞めたが、それでもトライの雲を掴む様な話に乗らざるを得なかったのには訳がある。
俺は狂おしい程に童貞だった。
トライに、取り敢えず行く、とだけ伝え、佐々見駅改札に24時集合という事を確認すると、直ぐ様電話を切った。
俺は即刻風呂場に向かいバスタブに湯が溜まっている事を確認した。
さっき親父かお袋が入ったのだろう。
急いで服を脱ぎ、シャワーも浴びず、俺は湯船に頭を浸けた。
混乱している頭をリセットする必要があった。
水中の音はまるで宇宙の音の様だ。
昭和の大発明の一つであるタコ型火星人が俺に近付いて来て「ドウテイソツギョウオメデトウ」と祝福してくれてるシーンを想像した。
俺は湯船の中でそっと眼を開けてみた。
痛い!
何かが右目に入った。
バスタブから頭を出し、右目を軽く擦ってみた。
俺の手の甲には陰毛が付着していた。
瞳に陰毛。
君の瞳に陰毛。
インモラルな陰毛。
これが親父の物だろうがお袋の物だろうが、そんな事はどうだっていい。
ただ神だか悪魔だかに「お前に童貞は捨てられないよ」と馬鹿にされた気分になり無性に腹が立った。
俺は気分を取り直し、いつもより丁寧にシャンプーをし、ありったけの力で体を洗い、歯茎が削げ落ちんばかりに歯を磨いて風呂場を出た。
バスタオルで適当に体を拭き、一軍のボクサーブリーフを履き、濡れ髪のまま親父の服がある部屋へ直行した。
12割で隆起した股間の幼馴染みが、ガッツポーズをしているかに思えた。



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